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取引先がインボイス発行できない?免税事業者との取引で気をつけること

令和5年10月以降、仕入税額控除の適用にはインボイス(適格請求書)が原則必要となります。仕入税額控除を行うためのインボイス(適格請求書)を発行できるのは課税事業者のみとなりますので、免税事業者との取引においては、インボイス(適格請求書)は発行されません。

そのため、個人事業主やフリーランスを含む、免税事業者との取引が多い事業者は、対策を講じなければ納税額が増加することになります。

免税事業者との取引で損しないために取るべき対策

課税事業者になるよう依頼する

免税事業者か課税事業者になれば、適格請求書が発行できるようになります。納税額の増加を防ぐために免税事業者に課税転換を依頼し、これまで通り取引を継続するのも一つの方法です。

ただし、免税事業者である取引先が課税事業者になることで、これまで払っていなかった消費税額を払うことになるため、その分取引の価格を引き上げて欲しいと交渉されることも考えられます。取引価格の交渉は一方的に拒否するわけにはいかず、法違反となる可能性もゼロではありません。免税事業者から料金の改定などを相談された場合は両者でよく話し合い、適切な価格を検討する必要があります。

取引価格の減額交渉を行う

免税事業者によっては、課税転換を受け入れられない事業者もいるかと思います。
その場合は、取引価格の引き下げを交渉する方法があります。現行より支払う消費税額が増えるため、その分の取引価格の引き下げを免税事業者に依頼することで、少なからず支出を防ぐことができます。

価格を引き下げられないからといって一方的に取引を停止すると法律に接触する恐れもあるため、交渉に応じないケースを想定した上でしっかりと話し合うことが大切です。

免税事業者との交渉で気をつけること

今後の取引継続のために価格調整を相談したり、インボイスが発行できる課税事業者になるよう提案したりすることは問題ないですが、どちらか一方にとって極端に不利な条件とならないように留意する必要があります。実際に免税事業者との取引を検討する際には、下請法や独占禁止法などの法律に抵触しないよう、慎重に交渉を行う必要があります。

開始後6年間はインボイスがなくても一定割合の仕入税額控除ができる経過措置があるため、お互いに納得できるよう十分に相談していくことが重要です。

問題となりうる行為には次のようなことが挙げられます。

  ■次の例の前提条件

  A=取引上優越した地位B  B=Aとの今後の取引への影響を懸念しAの要求をのまざるを得ない状況(Aによる優越的な地位の乱用)

一方的な価格引下げ

形ばかりの価格交渉を行い、実質はAの都合のみを尊重した著しく低い価格を設定し、Bが負担した消費税額もカバーできないようなケース

商品などの受領拒否

商品やサービスの購入を契約した後で、インボイス発行事業者でないことを理由に商品の受領を拒否するケース

協賛金などの負担要請

価格据え置きの交換条件として、協賛金や販売促進費などの名目で金銭負担や、発注内容にはないものの無償提供を要求するケース

購入や利用の強制

価格据え置きの交換条件として、その取引とは関係のない商品の購入や、サービスの利用を強いるケース

取引の停止

取引上の地位が優位であることを利用し、インボイス発行できないことを理由に著しく低い価格を設定するなどし、応じない場合は取引を停止するケース

登録事業者となるよう強要

インボイス発行事業者への登録に応じなければ価格を引き下げる、取引を打ち切るなどと一方的に通告するケース

制度の導入後は、売り手が適格請求書を発行できる事業者でなければ仕入税控除を行えません。免税事業者は基本的に発行が認められていないため、取引で仕入税額控除を活用するのは難しいでしょう。
しかし、制度開始から6年間は現行の区分記載請求書であっても一部の仕入税額控除が認められる経過措置が設けられています。「すぐに課税転換するのは難しい」「しばらく様子を見て取引先の対応を検討したい」といった場合は、経過措置が終了する2029年10月まで判断を引き延ばすことができますので、あせらず交渉することが大切です。ただし、経過年数によって認められる仕入税額控除の割合が変わるため注意が必要です。

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